日本三大仏とは「鎌倉大仏」「奈良大仏」「高岡大仏」だそうだ。(『雑学・日本なんでも三大ランキング』講談社+α文庫)奈良と鎌倉は不動(明王ではない)だが、高岡以外にも「兵庫大仏」「岐阜大仏」が日本三大仏を名乗っている。三大なんとかというのは3番目くらいのモノが主張するのであって、独走する王者は後ろの順位を気にしない。
それより気になるのは、イケメン大仏ランキングだ。有名なのは『明星』明治37年8月号に発表された次の歌だ。
鎌倉や銅(かね)にはあれど御仏は美男におはす夏木立かな
ところが、翌年1月に刊行された歌集『恋衣』で次のように改作された。
鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな
これがいけなかった。鎌倉大仏は釈迦牟尼仏ではなく阿弥陀如来だというのである。ま、それはいい。どっちにしろ、鎌倉の大仏様は美男だ、ということだ。
ところが、昭和8年11月5日に与謝野鉄幹・明子夫妻は、完成したばかりの高岡大仏を見て、鎌倉大仏より一段と美男だ、と感嘆したという。写真を見ると確かにイケメンだ。トップを独走する奈良の大仏様も、高岡の大仏様には及ばない。
三大仏の3番目争いをしているライバルに兵庫大仏がおわす。平成3年の建立で新しい。こちらはこちらでなかなか端正な顔立ちをしている。晶子が見たら何と言っただろうか。
さて、同じ神戸市内には昭和7年完成の別の大仏がある。アール・デコの時代を背景としたモダンな大仏だろうか。
神戸市兵庫区里山町の神戸市立鵯越墓園に「鵯越大仏」がおわす。緑に囲まれて気持ちよさそうに居眠りをしている。
昭和7年12月に開眼式が行われた鵯越大仏は、高さ38尺:12.54mの鉄筋コンクリート製とのことだ。墓地の造成に伴い建立された。
お顔を拝見すると…居眠りではなく瞑想していらっしゃった。イケメンかどうかを問うのはどうでもいい。安らかなお顔が、身近にいるいいヤツの風貌をしているのは間違いない。青銅色の着色が落ちてコンクリートだとよく分かる部分も見られる。
さすがの観光客もここまでは足を運ばない。忘れ去られそうな鵯越の大仏様が見ていらっしゃる風景が下の写真だ。
これはなかなかの贅沢な眺めだ。神戸に住み街の振興に尽くした人々の冥福を祈り、今後の発展を祈念している鵯越の大仏様は、もしかしてだけど、もしかしてだけど、神戸を見守っている守護仏じゃないの?
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