日本の神々は人間的で,よくけんかをする。石龍比古命(いわたつひこのみこと)と石龍比賣命(いわたつひめのみこと)の夫婦もそうだ。『播磨国風土記』が灌漑用水をめぐる争いを伝えている。
夫は北の越部村に,妻は南の泉村に水を流したいと思っていた。夫は山の峰を踏んで低くして越部村へ水を流した。妻は櫛で水をふさいで溝を掘って泉村へ流した。そこで夫は川の流れを西の桑原村へと変えた。すると妻は暗渠を作って泉村へ水を流した。
たつの市の亀山(きのやま)に「水争い遺称地」がある。
亀の池(きのいけ)から流れ出た水は,自然の地形では北の越部村に多く流れる。そこで,堤を築いて南の出水村に水が流れるようにしている。
神々の争いとは,実のところ人間界の争いだったのだろう。