「よーうつってじゃが」「ほーかのー」とは岡山弁の会話で、「よくお似合いですね」「そうですかぁ(照)」という意味である。この似合うを「映る」と言うのは我が国古来からの用例であり、「気疎(けうと)し」を「きょーてー」と使い続ける岡山弁ならではの生きた古語である。
同じ映の字で「映える」という言葉は、鮮やかに引き立って見えるという意味で、古語では「映ゆ」と言った。近年は「はえる」ではなく「ばえる」という読みが広まっているが、出所はおそらくインスタ映えだろう。
浅口市鴨方町小坂東に「杉谷池」がある。堰堤で水がせき止められており、ダム湖のようであり、大きな溜池のようでもある。
この時、私は阿部山へと細道を車を走らせており、知らなかったら通り過ぎただろう。駐車スペースがあったので、Googleマップの情報を思い出し、立ち寄ってみることにした。現地にはありがたいことに、次のような説明板がある。
杉谷池
別名杉谷ダムと言い灌漑用水専用のアースダムです。
下流河川名は里見川水系杉谷川でダムの竣工は昭和42年(1967)
池の能力、寸法
・堤高:35.7m ・堤頂長:101.7m ・堤体積:126.000m3
・流域面積:3.6km2 ・潅水面積:3ha(30.000m2)
・総貯水容量:356.000m3 ・有効貯水量:356.000m3
杉谷池の配水地区
・小坂東地区 ・小坂西地区 ・みどりヶ丘地区 ・深田地区
・鴨方地区 ・本庄地区 ・地頭上地区 ・金光地区(北)
*配水地区の池水位低下時に要請で山中の水路経由で送水します!
◎杉谷池の見所
★巷で人気の天空への階段
池南側土手の階段下から上を眺めると天空へ昇っていけそうなインスタ映えする景観が見れます。青空時がよく映えます。
★日本で唯一の水鏡の杉谷富士
風雨が無く水面が波立たない時に池の水面に周囲の山々が映し出され土手に向かって残った水面に富士山が現われます。水鏡の富士山が見えたらラッキーな気持ちになれます。
★越流水の白滝
大雨で杉谷池の荒手越えした多量の水が落差大の越流水路で白い滝のような状景が見れます。
大きな構造で広範囲に水を供給している優れた池だと分かる。それだけでなく今どきの映えサーチャーのために貴重な情報を提供してくれているではないか。これは行かざるべからず。
三つ星のうち二つを記録したのが本記事の写真2枚である。上が「天空への階段」、下が「水鏡の杉谷富士」である。近年は「天空」流行りで、天空の城、天空の湯、天空の鳥居など、いろいろある。天空への階段を上がったはいいが、本当に昇天したらシャレにならないだろう。
杉谷富士は実在するご当地富士ではなく、湖面に映る山影である。これを富士山に見立てるのは、日本人ならではの感性だろう。ポイントは山頂部の窪みだ。実際の富士山の形状とは異なるが、鋭角を成していないところが富士たる所以なのだ。
この溜池は杉谷川へと続く。下流にはかつて水車が多く設けられ、地元の小麦を製粉していたという。この伝統が今の手延素麺(例えば、かも川手延素麺)につながっているのだ。さあ、素麺の季節になった。私のお薦めは、なんといってもサラダ素麺だ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。