日本史上の合戦はロマンで語られる。神社に奉納される絵馬には,源平や川中島の合戦の名場面が描かれている。しかし,対外戦争となるとロマンでは済まされない。
姫路市香寺町香呂に「一原神社」がある。
拝殿に日清戦争を描いたと思われる絵馬が掲げられている。「明治廿八」の文字をかすかに読むことができる。清国兵を日本兵が懲らしめているような絵柄である。
姫路市香寺町須加院に「八幡神社」がある。
拝殿に北清事変を描いたと思われる絵馬が掲げられている。「各國聨合軍北京城日本軍先登ノ圖」と読むことができる。傷みが激しいが北京城の朱壁はよく残っている。
どちらも清国との戦争である。その後の歴史に思いを致せば,大日本帝国の栄光と素直に喜ぶわけにはいかない。しかし,それは後知恵というものであろう。これらの絵馬は,当時の民衆の気持ちを伝える貴重な文化財である。