建物には法定耐用年数というのがあり、住宅では木造で22年、RC造やSRC造で47年である。じゃ1300年以上の法隆寺はどうなるの? 建材としては、鉄のほうが余程強いように見えるが、木の強度はかなりのものだそうだ。今日は日本最古の住宅のお話である。
五條市五條一丁目に「栗山家住宅」がある。格式の高さが伝わってくるような町屋である。
本瓦葺の屋根にのる立派な煙出しが印象的だ。説明を読んでみよう。
国の重要文化財に指定されています。棟札に慶長12年(1607)の銘があり、建築年代の判っているものでは日本最古の民家といわれています。
慶長12年といえば、江戸幕府が成立して間もない時期で、大坂城には豊臣氏の勢力も健在だった。大河ドラマの風景がリアルにあるようなものだ。五條は交通の要衝だけに、豪壮な家を建てることのできる有力な商人がいたのであろう。
この民家は「日本最古」というが、「建築年代の判っているものでは」という留保がついている。というのも、年代は明確ではないが室町時代の建築という民家が現存しているからだ。
神戸市北区山田町の「箱木千年家(せんねんや)」、姫路市安富町の「古井千年家」、五條市西吉野町の「堀家住宅」がそうである。また、富岡市の「旧茂木家住宅」は大永七年(1527)の築とされ、「栗山家住宅」よりも古いように思えるが、江戸時代になっての再建という見立てもある。いずれも最古級と呼んで間違いでなく、いずれも国の重要文化財である。
ただし「栗山家住宅」の魅力は最古にとどまらず、街の景観の一部となり今も住宅として活用されていることにある。ここは「五條新町(新町通り)」という重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
写真は「松の友」蔵元の山本本家と市口薬局である。この通りを向こうに進めば伊勢街道、手前に引き返せば紀州街道となる。今は町屋カフェもある瀟洒な観光地になっている。しばし時を忘れ、木のぬくもりを感じながら散策するとよいだろう。初めてなのに懐かしい風景がそこにある。