「帽子をあみだにかぶる」とは、帽子の前を上げて斜めにかぶることだが、なぜ「あみだ」というのか知らなかった。なんでも、むかし笠を頭に付けていた時、前を上げて斜めにかぶると、阿弥陀仏の光背のように見えたことに由来するというのだ。あみだにかぶるのは不良っぽいというイメージがあったが、なかなか神々しい姿だと分かった。
今日は、本当に光まばゆい阿弥陀如来が出現したという滝を紹介することとしよう。
郡上市白鳥町前谷に県指定名勝の「阿弥陀ヶ滝」がある。約60メートルの高さを誇り、日本の滝百選の一つである。
圧倒的な迫力で信仰の対象となるのが実感できる。名前の由来を説明板で読んでみよう。
伝記によれば、養老六年(西暦七二三年)白山開祖泰澄大師が白山中宮(現在の長滝白山神社)の本殿建立の時一夜女神のお告げにて西北山中に清泉を探し、行ってみると怪しくけわしい岩の断崖から飛瀑の直下するのを発見した。大師はこの滝を長滝と名づけ、この清泉に斎戒沐浴して白山中宮の建立に奉仕し、その瑞祥に感じて白山中宮長滝寺と称するようになった。
以来この滝は白山信仰の霊場として修験者、滝参りの人々で賑わってきたが、天文年間(約四六十年前)長滝阿名院道雅法師がこの滝の洞窟で祈念をしてみると光まばゆい阿弥陀如来が現れたことから、“阿弥陀ヶ滝”と呼ばれるようになった。
養老六年は722年である。泰澄大師が白山を開山したのが養老元年(717)だから、大師はこのあたりの山中を何度も探索したらしい。大師が名付けたのは「長滝」であったが、16世紀に阿弥陀如来が出現したので「阿弥陀ヶ滝」と呼ばれるようになった。
迫力ある滝には超自然的なものを感じる。そこが信仰の原点なのだが、ここは冷静に地学的に追究することにしてみよう。この滝の北に大日ヶ岳という山がある。今から100万年前頃に火山活動がさかんで、周囲に溶岩や火山灰が堆積した。雨水は集まって川となり柔らかい火山灰層を浸食し、硬い溶岩が残され滝を形成する。滝が流れ落ちる崖を造瀑層というが、阿弥陀ヶ滝のそれはデイサイトという溶岩なのであった。
阿弥陀ヶ滝を人文・自然の双方から説明すると以上のようになるが、滝は理屈ではない。郡上おどりでは「見たか聞いたか 阿弥陀ヶ滝の 滝の高さと あの音を」と謡われる。とにかく轟音と水しぶきに包まれていると誰でも、修行する修験者の気持ちが少しだけ分かるのである。
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