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かつて人力の所為にあらず

ゆるぎ岩」など絶妙なバランスの不思議な岩が世界各地にある。どのようにしてできたのか時間を縮めて見てみたいものだ。本日紹介の岩は温泉街入口のモニュメントのように佇んでいるが、よく見ると絶妙に重なっている岩である。

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美作市湯郷に「重ね岩」がある。

どのようにしてできたのだろうか。説明板を読んでみよう。

湯郷むかし話 かさね岩の伝説
むかしむかし、この地方に大きな大きな大男がいました。その男の名はさんぶ太郎と言いました。ある日、さんぶ太郎が那岐山に腰かけて昼めしをたべていると、大きなおむすびの中に二つの石が入っていました。さんぶ太郎はその石をつまみ出し足もとにかさねておいたそうです。
湯郷温泉観光協会

なるほど、そうなんだ。しかし、どんだけ大きいんや。しかも、地学的にはまったく説明になってませんがな。まさか、温泉組合の人が人寄せにと、クレーン車で積み重ねたのではあるまいな。

そんなことはない。19世紀に津山藩士が書いた『東作誌』という郷土誌に掲載されているのだ。作陽誌『東作誌』二巻「勝南郡鹽湯郷湯郷村」の「積み岩」の項を読んでみよう。

積み岩 雅名重嵓
湯の郷町より二丁斗(ばかり)西の方山の麓に在り大石の上へ大石を積み累(かさね)たる也昔一人の尼有てつみかさねたると土俗云伝へり曾て人力の所為にあらす別に図を添ふ石上滑平にして春日騰りて興を催ふすと云凡廿人斗坐して猶狭しとせずといへり

決して人力のせいではないと言いながら、むかし一人の尼が積み重ねたという説を紹介している。この尼が巨人なのか。とはいえ巨人とは一言も書いていない。「さんぶ太郎」には程遠い。

ならば、さんぶ太郎はいつ登場したのだろうか。そして、いつおむすびの中の石をつまみ出して積み重ねるようになったのか。昔ばなしと言いながら、それほど大昔ではないのかもしれない。


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