コンビニに行っても図書館に行っても、どこに行っても入口でアルコール消毒をするようになった。新型コロナウイルスという穢れを祓い清め、自らの健康と社会の安心安全を保つためである。
神社に参拝するときには手水舎で手や口を清めるが、近頃は感染防止のために柄杓が撤去されている。マイ柄杓を持ち歩くのがおすすめだそうだ。その昔は神に向き合う前には「禊(みそぎ)」といって、川の水で身体を洗い清めていた。アルコール消毒が現代のミソギであるとともに、カネ、失言、不倫など各種スキャンダルを引き起こした政治家の出直し選挙も「みそぎ」という。
鳥取市桜谷に「桜谷神社」が鎮座し、「瀬織津姫像」が迎えてくれる。姫のお出ましは平成25年から今年の3月で8年となる。
古くからのお宮のようだが、どのような由緒があるのか、瀬織津姫とはどのようなお方なのか、『鳥取県神社誌』(昭和10)で調べてみよう。
村社 桜谷神社 岩美郡面影村大字桜谷字岡谷鎮座
祭神 瀬織津姫命
由緒 勧請年代詳かならず、旧く鎮守大明神と称へしが明治元年六月桜谷社と改め更らに明治七年三月桜谷神社と改称せり。
例祭日 三月十九日
建造物 本殿、拝殿、参籠所
境内坪数 二百四十坪
氏子戸数 二十三戸
由緒の詳細は不明だが、御祭神が瀬織津姫であることは確かめられた。神社に奉納されている女神像はふつう平安美人であるが、桜谷神社の瀬織津姫はアイドルかと見まごうばかりのルックスである。
いったい瀬織津姫はどのような女神なのか。記紀には登場しないが、『延喜式』に記載されているという。調べてみると巻八附録祝詞「六月晦大祓」で、次のような一節が見つかった。
高山の末、短山(みぢかやま)の末より、さくなだりに落ち沸(たぎ)つ速川(はやかは)の瀬に坐す、瀬織津比咩(せおりつひめ)と云ふ神、大海原(おほうみのはら)に持ち出でなむ。
高い山低い山から一気に流れ落ちる早瀬におわします瀬織津姫が、ありとあらゆる罪を大海原に持ち出してくださいます。瀬を早み岩にせかるる滝川にあって、地上の罪を洗い流してくれるというのだ。
なんとありがたいことであろうか。今こそ瀬織津姫を崇め奉り、悪玉ウイルスを一掃しようではないか。アルコール消毒は科学的に正しく、アマビエもかわいらしくてよいが、平安の昔から我が国を浄化してきた美しい姫をお祀りすることも不可欠だろう。ささやかながらこの一文を姫に捧げ、コロナ禍終息を祈念するものである。
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