和泉式部は伝説の歌人である。厳島参詣の折に大嵐に遭い,尾道の向島に上陸した式部。夫の保昌と相談し,天神山にある枝ぶりのよい松を古江浜に移植した。時を経て枝が四方に広がった松が明治十年頃まであったという。
古江浜の金比羅宮・胡神社の右手に「和泉式部手植下り松碑」がある。碑は大正六年に建てられた。
向島には「歌」という地区があり,式部との縁を連想させる。歌浦と古江浜の間に遍留遠谷(へるおだに)があり,次のような歌が伝えられている。
へるをだに おそしとぞおもふ から衣 たつをきしとは 誰かいふらむ
人待つ身には道すがらさえ遅いと思うのに,出発したことを来たというのはおかしいわね。なるほど,と感心させられる歌に思えるが,柳田國男によると「へぼ歌」なのだそうだ。
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