国境(くにざかい)の橋は「両国橋」と呼ばれ,両国国技館近くのものが有名だ。ここは隅田川をまたぐ武蔵と下総の境である。
ここで紹介する両国橋は,橋があるのかどうか分からないくらい小さい。岡山市の吉備中山を帯のように流れる「細谷川」を渡る橋だ。ここが備前と備中の国境である。
しかし,吉備中山に細谷川はもう一つある。吉備津神社の境内の端に「吉備中山細谷川古跡」との堂々たる石碑があって,その側の谷川がそれだという。むしろこちらのほうが有名だ。
真金吹く 吉備の中山 帯にせる 細谷川の 音のさやけさ
古今集(巻二十1082)のこの歌は仁明天皇の大嘗会の際の歌で,吉備中山を語る時によく引き合いに出される。
しかし,万葉集(巻七1102)には次のような本歌がある。
おほきみの 御笠の山の 帯にせる 細谷川の 音のさやけさ
細い谷川の流れる音は,どこの山にあっても,私たちの心を癒してくれる。
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