厩戸皇子が伝説化して聖徳太子となったように,菅原道真もまた,天神様として伝説に彩られた人物である。左遷の菅公がお通りになった瀬戸内には,さまざまな霊験譚がある。
岡山市十日市東町の子安天満宮に「御祭神菅公腰掛石古跡」がある。
座るのにちょうどよさそうな石が拝殿の脇に祀られている。今ではずいぶん内陸になっているが,古代にはこの辺りまで海だったらしい。
道真の乗った船は児島の内海を通っていた。長旅の疲れを感じた頃だったで,船から磯にあがり,傍らにあった石に腰をかけて休んでいた。その時,付近の一軒のみすぼらしい漁師の家から女のうめく声が聞こえてきた。道真はどうしたのかと思い中をのぞくと、漁師の妻が難産で苦しんでいたのだった。みるにみかねた道真が安産の歌を詠んで与えたところ,やすやすと子供が生まれたという。
爾来,子安天満宮は安産の神様として多くの人々の信仰が集まるようになった。「子育天神」としても知られたそうだ。また当然,学問の神様でもある。生涯学習の時代である。生まれる前から一生お世話になることのできる神社である。
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