眼鏡橋といえば九州に多い。しかし、今日紹介するのは関東地方で、しかも3連アーチ、しかもあの有名作家が描写していた。
千葉県安房郡白浜町滝口(現南房総市白浜町滝口)に「めがね橋」がある。長尾橋とも眺尾橋ともいう。
明治21年(1888)3月に長尾川に架けられた橋で120年以上の歴史を誇り、県指定有形文化財に登録されている。関東では珍しい形状のこの橋は林芙美子の眼に留まった。「房州白浜海岸」(昭和26年初出)という紀行文を『ふるさと文学館第13巻千葉』(ぎょうせい)で読んでみよう。
海沿ひに布良をまはるつもりだったが、私は、山越えをして、近道をとって、白浜海岸へ出て貰った。館山から、この近道は十六キロ位のところであらうか。途中、中国風な、石造りの眼鏡橋を架けた、川沿ひの鄙びた部落があったが、むづかしい世の中になったら、こんなところへ逃げて来ようかとも思った。昔、中国から戻ってきた人でもゐて、こんな支那風な眼鏡橋を架けたのではないかと、景色にみとれてゐるうちに、私は、つい、部落の名を聞くのも忘れてしまった。
私にはそれほど中国風に思えないが、林芙美子は日中戦争の従軍記を書いていることから、盧溝橋のような石造アーチ橋を思い起こしたのであろう。
めがね橋は2005年に土木学会選奨土木遺産に認定されている。古い石橋だけに耐震性はどうなのか。ここは叩いて渡るのが安全なのでは…、いや先人の知恵の方が優れていることが多い。これからも多くの人を渡していくのであろう。
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