古池や蛙飛こむ水の音
この句を俳画にすると面白い。ある人はカエルが飛び込む瞬間を描くだろうし、ある人は飛び込んだ後の水の波紋を絵にするだろう。また別の人は音に気付いた芭蕉の!を表現するだろう。イメージが湧き、動きがあって、音がする。まさに俳句の決定版ともいえる名句である。
江東区常盤1丁目の芭蕉稲荷神社は「深川芭蕉庵」があった場所である。
深川芭蕉庵とは、松尾芭蕉が延宝八年(1680)にそれまでの宗匠生活を捨てて江戸日本橋から移り住んだ草庵である。芭蕉はここを拠点として多くの名句を残した。古池や…の句もここで生まれた。貞享三年(1686)のことだという。
この場所が芭蕉庵の跡だと分かったのは、次のようなエピソードがあったからだ。芭蕉遺蹟保存会が設置している説明板の一部を読んでみよう。
たまたま大正六年津波来襲のあと芭蕉が愛好したといわれる石造の蛙が発見され、故飯田源次郎氏等地元の人々の尽力によりここに芭蕉稲荷を祀り、同十年東京府は常盤一丁目を旧跡に指定した。
この旧跡の名称が「芭蕉翁古池の跡」なのである。もちろん古池の句碑も建てられている。右側の石がそれだ。
近くの芭蕉記念館にくだんの石のカエルはいる。その代わりのように芭蕉稲荷には陶製のカエルがいる。そういえば、うちの隣の家の庭にも仲間がいる。庭の池を前にして置かれているのは俳聖の名吟をイメージしていたのだと、今頃になって気が付いた。
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