川口を訪れるまでキューポラが何なのかを知らなかった。語感からメルヘンっぽいものと思っていた。川口は鋳物の町である。映画にもなっている。『キューポラのある街』はDVDで見た。やはり列車を見送る別れの場面は圧巻だ。その後の歴史を知っていることがいっそう切なくさせる。
川口市金山町の川口神社の境内に「金山神社」がある。
社殿の前に見事な天水鉢がある。下半分ならよく見かけるが、こうなると芸術の域に達する。制作したのは鈴木文吾、あの東京オリンピックの聖火台を制作した鋳物師である。聖火台が黒光りして美しいのは胡麻油で磨いているからだそうだ。この天水鉢は昭和37年に設置され、文吾氏自身、そして氏の死後は川口鋳金工芸研究会が磨き作業を毎年行ってきた。
川口駅東口に「働く歓び」という像がある。今は写真の頃より美しく展示されているようだ。説明板を読んでみよう。
この作品は、社団法人川口青年会議所創立10周年を記念して、昭和49年(1974年)に富田匠美氏のデザインで製作された、川口を代表する「鋳物」と働く事の素晴らしさを表現したものです。
鋳物を造る職人が、キューポラと呼ばれる溶鉱炉で銑鉄を溶かし、「湯汲(ゆくみ)」と呼ばれる柄杓(ひしゃく)で受け、一気に鋳型に注ぎ込む注湯(ちゅうとう)作業を表しています。
「キューポラのある街」川口で今も活躍するキューポラ。この日のお土産は日三鋳造所で買ったベーゴマだ。東京オリンピックの聖火、吉永小百合の映画、そして鋳物工。みんな日本の高度成長を支えたシンボルである。
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