移動販売をする業者は「来たよー」と知らせるメロディを持っている。昔の豆腐売りのラッパ、今ならパン屋さんがそうだ。♪かきねのかきねのまがりかど…♪とは有名な童謡「たきび」である。とてもリズムが良いので口ずさみやすい。最近このメロディがうちの近所でよく聞こえるようになった。今年も灯油販売車が活躍しているのだ。
中野区上高田三丁目に「『たきび』のうた発祥の地」がある。閑静な住宅街の中に今も垣根があって落葉が散っているところに風情を感じる。
弾むようなリズムを作曲したのは音楽教師の渡辺茂、ほっこりとして和む作詞をしたのは詩人の巽聖歌(たつみせいか)である。この地は巽聖歌ゆかりの地ということだ。説明板を読んでみよう。
今も人々に愛唱されている「たきび」のうた。この童謡の作詩者、巽聖歌(本名野村七蔵 一九〇五~一九七三)は、岩手県に生まれ、北原白秋に師事した詩人で、多くの優れた児童詩を残しました。
聖歌は、この詩が作られた昭和五、六年頃から約十三年の間、萬昌院のすぐ近く、現在の上高田四丁目に家を借りて住んでいました。朝な夕なにこのあたりを散歩しながら、「たきび」のうたの詩情をわかせたといわれています。
この歌は昭和16年の発表だが、広まったのは昭和24年頃からである。平成18年に文化庁と(社)日本PTA全国協議会による主催で「親子で歌いつごう 日本の歌百選」が選定された。「仰げば尊し」から「世界に一つだけの花」まで101の名曲が並ぶ中に「たきび」もある。
私の住む場所には上の写真のように詩情のわく風景は見られないが、この冬も灯油の移動販売車の流す「たきび」のメロディに心と体を温めることだろう。
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