ご当地富士は数あれど、讃岐富士に勝る山はない。瀬戸大橋を渡ると、真正面に山容の整った山が見えてくる。これが飯野山、またの名を讃岐富士という。
横から見るだけでなく、上からも見てみよう。この場合、等高線の見える地理院地図が最適だ。同心円状の密な等高線から、きれいな円錐形であることが分かる。
本物の富士山に登ったことはないが、「讃岐富士」の登頂には成功した。山を周るように登山道が整備されており、傾斜が緩やかで歩きやすい。ところどころ眺望のよい場所があって、非日常的な視点を堪能できる。
登る楽しみ、見る楽しみだけでなく、知る楽しみもあった。地学的には、この山は「ビュート」という地形で、同じ香川県内の屋島のようなテーブル状の高地「メサ」が侵食されて形成されたものである。あの有名なモニュメント・バレーの仲間だということか。
民俗学的には、山頂で語られるスケールの大きな伝説に着目したい。
坂出市と丸亀市の境に位置する飯野山の山頂に「おじょもの足跡」がある。
写真では「巨石群」と書かれた立札の右にある窪みのことである。確かに足跡のようにも見える。イエティかビッグフットか、それとも、いいのっちか。(そんなUMAはいない。)
「おじょも伝説」
「おじょも」とはこの地方に伝わる伝説で巨人の事なんじゃ。
昔々その昔、山を造るのが得意なおじょもがおっての、海を渡った長旅の疲れからか、天秤棒で担いだ後のふごをひっくり返して、城山と常山ができたんじゃ。
前のふごは丁寧に移してできたんが飯ノ山なんじゃ。
ほんで足跡が南西にある事から飯ノ山と象頭山を跨いで小便をして、できたんが土器川と言う人もいるんだそうじゃ。
巨人伝説は各地にあり、このブログでも「ダイボーの足跡」を紹介したことがある。まさか『進撃の巨人』のような事実が過去にあったわけではあるまい。おそらくは、飯野山の山容が特に美しいことを、なんとか説明をしようとして創作された物語であろう。
人の目は、何かを初めて見た時に、一番近い既知のものになぞらえて見る習性がある。この岩には単なる三角形の窪みがあるにすぎないのだが、それを足跡に見てしまうのである。ただ冷静に見れば、伝説の内容に比べてその足跡は小さすぎる。ま、おおらかな伝説だから大目に見ようではないか。
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