まだまだ小さかった頃、近所に「足踏み水車」があり、おじさんが上に立って回していたことを憶えている。玉乗りでバランスを崩すのと同じように落ちてしまわないか気が気でなかったし、ハムスターの回し車ようにクルクル回って止まらなくなるのではと心配したものだ。
うちは干拓地なので用水の流れは常に緩やかだから、水車の動力は人力以外になかった。本日は、無人ながらも水の流れに任せて自転する水車の話である。
兵庫県神崎郡神河町新野に「新野の水車」がある。ギギギーッと回る音もいい。
私が見た足踏み水車はやがて石油発動機によるポンプに代わり、田んぼに力強く水が入るようになった。全国的にも水車は激減し、今や観光資源となっている。このブログでも「福岡県朝倉市発祥の地」で久重(ひさしげ)の二連水車を紹介したことがある。
ここ新野の水車には、どのような由来があるのだろうか。説明板を読んでみよう。
新野地区では元禄6年(1693年)頃から、水路より高い場所にある田んぼに水を入れるために水車が使われてきました。
全国的にも珍しい竹枠式の構造で、 非常に軽く、乾いていれば2人で運ぶことも出来ます。
昭和30年代までは18基の水車が並んでいましたが、昭和50年代には3基にまで減ってしまいました。
そこで、地域の伝統文化を後世に残すため、熟練者の指導のもと地域住民の手で水車の製作、維持管理、補修などを行っています。
朝倉の水車は松・竹・樫・杉などで作られ、大きく黒光りがしている。二連、三連で稼働する姿はSLさながらだ。いっぽう新野の水車は、「全国的にも珍しい竹枠式の構造」で 非常に軽いそうだ。こちらはこちらで軽やかな夏の風物詩である。
実りの秋が終わって冬の気配を感じるようになった。水車は今月下旬には引き上げられオフに入る。メンテナンスののち再稼働するのは来年4月である。僕等はいつもそっと云うのさ、水車よ今年も有難う。
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