「脚下照顧」私はもっと足元を見つめなおすことが必要だ。拠って立つ大地は本当に不動なのであろうか。動かぬものと信じ切って、その堅固さを確かめようともしていないのではないか。頭上に降りかかるものばかりが気になって屋根ばかりを求め、地下深くで生じている変化に気付いていないようだ。その変化はやがて地上に出現するだろう。
三原市久井町吉田に「久井の岩海」がある。「久井・矢野の岩海」として国の天然記念物に指定されている。
斜面にあるので上から流れて来たように見える。この不思議な光景は、花崗閃緑岩(深成岩の一種)が地下深くで風化し形成されたものだという。説明板を読んでみよう。
指定基準 地質鉱物のうち風化並びに浸蝕に関する現象
昭和39年(1964年)、国の天然記念物に指定された久井の岩海は、備南最高峰宇根山(標高699m)のふもと(標高480m~530m)にあたり「ごうろ」ともよばれています。
傾斜のゆるい三条の谷間にそって、直径1m~7mの巨岩・怪岩が重なりあって長く帯状に続き見事な景観です。
ぜにがめごうろ 長さ550m 幅65m
なかごうろ 長さ350m 幅35m
おおごうろ 長さ350m 幅90m
こごうろ 長さ130m 幅30m
岩海は、大きな岩盤が気温の変化などで割れ目(節理)にそってはがれて離れ、さらに風化して、丸みをおびた岩石となって残っているもので、気候による侵触作用を示すものとして、学術上大変貴重なものです。
旧広島市民球場の10倍の面積(22ha)を有します。日本最大規模の久井の岩海をおとずれると、聞こえてくるのは野鳥のさえずりと風の音。水音峡に立てば岩の下深くを流れる水の音も聞こえ神秘的です。
久井岩海は、四季をとおして人々にやすらぎを与えてくれる、まさに自然のオアシスです。
久井の岩海は平成19年(2007年)に地質百選に選ばれています。
三原市教育委員会
旧広島市民球場は懐かしい。一度だけ親戚のおじさんに連れて行ってもらったことがある。よく東京ドーム何個分などと広さを表すのを見かけるが、さすがは広島県民、「旧広島市民球場の10倍」とは、カープ愛にあふれている。
ゴロゴロしているので「ごうろ」と呼ぶのも分かりやすい。メインの「ぜにがめごうろ」に、風化により表面が剥離している岩石がある。こうした風化が地下で進み、岩石の周囲にできた真砂土が流水の働きにより洗い流され、丸みを帯びた岩が露出しているのだ。
ぜにがめごうろの上流に「滝ごうろ」がある。確かに岩の滝だ。「人々にやすらぎを与えてくれる」と説明板は言うが、非日常的な景観によって冒険心が掻き立てられるくらいだ。「ごうろ、ごうろ」とつぶやきながら岩から岩へと渡っていると、本当にゴロゴロと動き出すような錯覚に襲われる。
もしかすると、ふだんの私の足元も「ごうろ」なのかもしれない。たまたま同じ高さの岩に足を置いたから渡れたのであって、いつなんどき踏み外すか分からないのではないか。確かなものはこの世にあるのだろうか。そう考えている自分がいることは確かだと思うのだが、それでいいですよね、デカルトさん?
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