『ジュラシック・パーク』に出てくるティラノサウルスは、ジュラ紀ではなく白亜紀の恐竜である。その白亜紀の火山活動はそれはもう激しいもので、大規模な火砕流が大地を襲ったようだ。そのころ日本列島はまだなく大陸東縁に位置し、アンデス山脈のようだったという。
中国地方も火砕流に覆われ、その岩石は現在、高田流紋岩類と呼ばれている。黒い岩肌の崖を水が滑り流れる。広島県が誇る日本の滝百選である。
三次市作木町下作木(しもさくぎ)に「常清滝(じょうせいだき)」がある。
広島県では唯一の日本の滝百選となる。もっとも岡山、山口も一つずつだ。鳥取、島根は二つずつで、うち鳥取市の雨滝を「滝の流れは絶えずして」で紹介したことがある。例年にない早さで梅雨入りした今年も美しい滝姿を見せてくれていることだろう。
常清滝は駐車場から遊歩道が整備され、アクセスが容易である。滝の間近まで行くことができるが、展望台に上がって壮麗な全体像を拝するほうがよい。この高さこそ百選入選の決め手だ。説明の石碑には次のように刻まれている。
広島県名勝「常清滝」
指定年月日 昭和35年8月25日
指定地 広島県三次市作木町下作木字天楽371番1,342番4
説明
この滝は中生代白亜紀の中期(今から約1億年前)に噴出した流紋岩の断崖にかかり、三段に分かれている。高さ126米に及び古くから名瀑として知られた日光の華厳滝や熊野の那智の滝の高さにも匹敵する。周囲の植生は深山性の要素に富み、トチノキ、ヤマモミジ、チドリノキ、ケグワなどの樹木からなるみごとな林相にかこまれた滝の姿は一段と美しい。
昭和57年10月1日 広島県教育委員会 三次市教育委員会
華厳滝が97m、那智の滝が133m。確かに126mの高さは日本三名瀑にも匹敵する数値だ。にもかかわらず、華厳や那智と並び称されないのは、直瀑と段瀑という形状の違いだろう。
轟音とともに一気に水が落下する姿は神々しさまで感じるが、三段に分かれて流れる姿も風景として美しい。一段目を荒波、二段目が69mの白糸、三段目を玉水と呼ぶそうだ。流紋岩は硬く浸食作用に強い。普段は木々に覆われて見えない一億年前の火山活動の痕跡を、流れ落ちる水が露わにしてくれた。
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