旅を満喫するには眺め、飲食、土産が欠かせないが、知的に豊かにするのは、歴史、植生、そして地質の三要素だろう。小さな史跡が語る深い歴史に耳を傾け、路辺の樹木から環境を知り、そして転がる石に、見上げる岩盤に大地の動きを見るのである。
旅の楽しみ必ずしも飲食を要せず、大地より歴史、植生、地質を学ぶべし。人の多く集まる観光名所でなくとも、日本のどこでも大地の三要素を楽しむことができる。本日は季節が異なるが、大地の造形美を堪能することとしよう。
岡山県苫田郡鏡野町上齋原(中津河)に「岩井滝」がある。滝を裏から眺めることができるため「裏見の滝」と呼ばれている。
涼を呼ぶ観光名所として知られているが、この日は朝早いからか誰一人会うことがなかった。裏から見えるように岩盤を刳り抜いたのではなく、自然の造形である。ただし、見学がしやすいように通路が整えられ、盛り土で滝見台が設けられている。
岩井滝と名水一〇〇選・「岩井」
中津河の山並を、「通り岩」と称する安山岩が南北に連なり、鳥取県境まで約25Km続いている。岩井滝は、通り岩の一部で岩盤が突き出て岩屋を形成し、不動明王が祀られており、数少ない裏見の滝の一つです。
むかし、この地に住んでいた忠左ェ門は、子宝に恵まれなかったので、岩井滝不動に願掛けをし、お告げによって「岩井」の水を21日間飲んで念願の女の子を授かり、美しく成長して養子を迎え、家業の木地挽(木工)によって長者となりました。
このことから、娘が生まれた7月10日を岩井滝祭りと定め、「岩井」の水は美と健康・子宝に恵まれる水として語りつがれています。
なお、この場所は中津川山国有林で氷ノ山後山那岐山国定公園に指定されております。
鏡野町 上齋原
裏見の滝となったのは、硬い安山岩の下にあった堆積岩が浸食されたためである。堆積岩はこのあたりがかつて水域だったことを示している。安山岩は三国山から噴出したマグマに由来する。現在の姿になるまでに、どのくらいの時間を要したのだろうか。
滝見道の途中に環境省選定名水百選の「岩井」がある。暑い時期に水のある風景に出会うとホッとする。これも透水層と不透水層のおかげだ。鳥取県との境に降った雨は地表を流れて滝となり、あるいは地下に浸透して名水となり、また一つとなって川となる。崇徳院の「われても末に 逢はむとぞ思ふ」を思い出す。
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