人が喰えば「食」だが、虫が喰ったら「蝕」である。だから蝕には「むしばむ」という訓読みがある。虫はパクっと食べるのではなく、カリカリと少しずつ食べていく。このことから、もとの形がだんだんと欠けていくことは「蝕」で表す。
すなわち、日蝕、月蝕、浸蝕、侵蝕、腐蝕などである。海水が岩を浸蝕することがあるが、これを「海蝕」という。さっそく現場に行ってみよう。
鳥取市浜坂に市天然記念物の「離水海食洞」がある。
海食は本来「海蝕」だが、蝕を食に書きかえた「海食」が正式な表記とされている。昭和31年に当時の当用漢字の使用を円滑にするため、第3期国語審議会は報告「同音の漢字による書きかえ」を政府に提出した。この指針に従った表記なのである。
海が食べたのではなく海が蝕んだこの岩盤は、いったいいつ形成されたのだろうか。説明板には次のように記されている。
鳥取市指定文化財
離水海食洞
昭和51年12月1日指定
この洞窟は、海の波浪によって形成された海食洞であるが、現在は海岸から遠く離れた場所にあるため「離水海食洞」という。
入口部分の高さは約1.0m、最大巾0.6m、奥行18mである。
この洞窟の形成については、縄文時代前期(約6千年前)頃に海水面が上昇 した「縄文海進」によるものと考えられ、その後の海退によって陸化したものであり、鳥取平野形成の地史を物語るものとして貴重である。
平成3年11月 鳥取市教育委員会
縄文時代には鳥取平野は大きな内湾となり、丸山の裾には波が繰り返し打ち寄せていたのだろう。そこには節理か断層という弱い部分があって、浸蝕により奥深くまで穴が開いたのだ。この時代には千代川による砂礫の搬出が少ないことから、砂丘の形成は進まなかったようだ。その後、弥生海退によって陸化が進み、千代川による侵蝕作用が強まるとともに飛砂が多くなり、砂丘形成が急速に進んだという。
水没の危機に瀕する南太平洋ツバルの外相(サイモン・コフェ法務・通信・外務相)は、膝まで海につかりながら気候変動対策を訴えた。世界第4位の面積を誇ったアラル海は、TOP10から消え去ってしまった。
ねえほんとは永遠なんてないこと。それは人の心に限った話ではなく、揺るぎなきように思える大地もそうだったのだ。やはり諸行無常こそ、永遠の真理なのかもしれない。
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