あだきみそあむという虹は七色という常識は、古今東西普遍的ではないそうだ。冒頭の七色の覚え方にも異説はあるだろう。我が国で七色という見方が普及するようになるのは、文政十年に青地林宗『気海観瀾(きかいかんらん)』が刊行されてからのことだ。ニュートンの光と色の研究を紹介したのである。今でも六色、五色と見ている民族は世界にたくさんいるらしい。正解はない。これは文化の問題なのだ。本日は「虹の木」を訪ねたのでレポートする。
岡山県苫田郡鏡野町羽出(はで)に「七色樫」がある。
春から夏にかけてなら色鮮やかで、もっといい写真になったかもしれない。これは12月初旬であまり目立ってはいないものの、周囲の緑とは異なる気品のある色をしている。いったいなぜ色が変化するのか、説明板を読んでみよう。
岡山県指定天然記念物
七色樫
ウラジロガシの一変種で、春の赤から始まり、橙・黄・黄緑・緑・青緑・濃緑と、四季を通じて葉の色が移り変わるところから「七色樫」、別名「虹の木」ともいわれる奇樹で、葉の色が一斉に移り変わることなく、前の色を残しながら色々な葉相をみせてくれる、美しく珍しい木です。とり木、挿し木をしても同様のものは育たず、この変色の原因は不明です。
鏡野町教育委員会
赤・橙・黄・黄緑・緑・青緑・濃緑と、虹の色とは異なるが確かに七色だ。だから虹の木なのか。どんどん変化することを七変化という。歌舞伎では「七化(ななばけ)」という踊りが元禄期からあるので、七色樫の名称はニュートンが見たスペクトルではなく、歌舞伎に由来するのかもしれない。
ウラジロガシは常緑樹だから紅葉しない。しかも紅葉とは逆の季節に暖色系となる。取り木や挿し木をしても同じものはできない。これだけ科学が発達し、約135億光年先の銀河を見つけたり、1万m超の深海からプラスチックごみをみつけたり、フェルマーの最終定理まで証明したりできた人類が、なぜ目の前の葉っぱの色が変わる理由が分からないのか。
これは、分からないように裏で操作している団体がいるという陰謀論でなければ、宇宙人のせいだ。いや、スペシウム光線を浴びてしまったからか。くだらぬ議論がいやなら、残されたのは神しかない。私たちが目にしているのは、奇跡なのです。
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