人間到るところ青山ありといい、大志を成し遂げる場所はどこにでもある。これまで、この世にどれだけの人が生まれ、精一杯生きて、そして亡くなっていったのだろう。それぞれに墳墓があるとすれば、私とあなたとの間にあってもおかしくない。実際、林間到るところ古墳あり、山を歩けば古墳に当たる場所がある。
福山市神辺町下御領の下御領古墳群に「下御領第13号古墳」がある。周辺は古墳だらけだ。
天井石ばかりが目立っており、開口部は小さい。内部を撮影すると、けっこう大きな石が使われていることが分かる。奥壁には、美しい鏡石があるようだ。先日公開した記事「中央政権と吉備穴国の首長」で紹介した迫山第1号古墳に似ているような気がする。古墳前に掲げられた表示札には、次のように記されている。
御領最大の横穴式石室、片袖式
全長11.5m 幅2.4m
迫山第1号古墳は「備後南部で最大の横穴式石室」であり、片袖式、全長11.6m、玄室幅2.5mと、ここ下御領第13号古墳とかなり共通項がある。どちらも尾根の先端に築かれ、ランドマークとして機能していたのだろう。大きく異なるのが玄室の高さだ。13号墳はどのくらい埋もれているのだろうか。
首長墓が見下ろす神辺平野御領地区には古代の住居跡がたくさん見つかっている。古代山陽道が通過し、国分僧尼寺が置かれた。中世に実相院門跡の御領となったことが地名の由来だと言われる。近世山陽道から国道313号神辺バイパスに至るまで、交通の要衝として不動の位置を誇る。
御領古墳群には、現代の霊園かのように小古墳が並んでいる。この時代、みんながみんな横穴式石室に葬られたわけではなかろう。古墳群の存在は、この地域がハイソサエティな文化を有していたことの証左かもしれない。
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