5月に金曜ロードショーで2週連続で『タイタニック』が放映された。久しぶりに見たが、不朽の名作とはこのことかと改めて感じ入った。沈没の原因は氷山への衝突だったが、警告の軽視や不十分な監視など人為的なミスが事故を招いたと言えるし、一か月遅れの出航で流氷が増えたという不運のせいとも言える。
氷山の一角と言われるように、氷山は海面上に体積の約11%しか姿を現さない。実は人間もそうなのであって、自覚的な顕在意識と心の奥深くに潜む潜在意識の割合も同じくらいだそうだ。色々な要素を考え合わせて最適な行動を選択しているように見えるが、案外、子どもの頃から染み付いたパターンを繰り返しているだけなのかもしれない。
神戸市東灘区西岡本四丁目に「野寄の大石」がある。どう見ても岩が隆起してフェンスを壊したとしか見えない。
土地の境界が岩のてっぺんを通過することにしていたのだろう。道路としては障害以外の何物でもないが、開発に伴って削り取られることもなく今に残ったことは幸運であった。どのような岩なのか、説明板を読んでみよう。
この石は花崗岩である。地面より高さ2.1m、周囲14mあり、100万年~数10万年前の侵食された穿孔が多く見られる。昔は旅人の目印になったこともある。この石はどこから転がってきたのか?貝類の侵食でこの地が海岸線だったのか謎である。
東灘歴史掘り起こし隊
東灘区役所
神戸といえば御影石と呼ばれる花崗岩が有名だから、これもその仲間なのかもしれない。六甲花崗岩は、火山活動が盛んだった7,500万年前のマグマが地下深くで冷えて固まったものだ。そして、1,500万年前に日本列島が誕生した頃に地表に姿を現したという。さらに、岩に穴をあけるという穿孔貝の浸食を受けているらしい。
この大石はいったいどのような変遷をたどって来たのか。氷山の一角のように地下深くの岩塊と一体化しているのか。それとも意外にも、円錐形の岩が地表にのっかっているだけなのか。岩は見た目が真の姿ではないかもしれない。氷山は何倍も大きさがあるし、人間だって奥深い存在だ。見かけで人を判断してはならぬが、浅い思考が見破られやすいのは確かだ。