訪れる前の期待を見事に裏切る観光地を「がっくり名所」という。高知市の「はりまや橋」がよく挙げられる。坊さんかんざしの情趣豊かなイメージが知られているが,実際には橋の周辺は都会の喧騒に包まれている。
福山市鞆町後地に「ささやき橋」がある。
橋のひかえめさと橋にまつわるロマンは,はりまや橋に劣らない。『沼隈郡誌』によると物語はこうだ。
応神天皇十六年、百済より博士王仁、経典を捧げて至る。時に鞆の駅館に官妓江浦(えのうら)という美姫ありしが、接待の公吏武内臣和多利(たけのうちのおみわたり)と相思の仲となり、夜な夜な橋上に喃々の語を交へ、或いは橋畔にきぬぎぬの別を惜しみしが、好事魔多く、二人は終に曠職の罪に問はるるに至れり。因って密語の橋といふなりと。
「蜜語」と書いて「ささやき」と読ませる。恋話にふさわしい語感だ。この橋の周辺は寺町で落ち着いている。坊さんかんざしは,むしろ,こちらの橋にお似合いだ。
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