古代の近衛府という役所は,今で言えば皇宮警察のようなものだ。近衛府の三等官を「将監(しょうげん)」という。戦国時代には古代の官職を勝手に名乗ったり与えたりする者が多かったが,今日は「将監」という武将の話である。
岡山県都窪郡早島町早島の早島公園内に「竹井将監五輪塔」がある。
早島公園のある丘は「城山」と呼ばれ,竹井将監の居城跡である。また,春には桜の名所としても知られている。将監は,官途名のみ伝わり,諱は詳らかでない。
この名もない武将を全国区にするには,高松城水攻めの前哨戦である冠山城の戦いで討死したが,その戦いぶりを秀吉から賞賛された毛利方の国人だと説明するのがよいだろう。将監らが立て籠もる冠山城に秀吉配下の猛将,加藤清正が一番乗りで攻め込んだ。激しい戦いの中,城中から火が上がり大混乱となる。この続きを旧版『早島町史』で読んでみよう。
竹井将監これをものともぜず大いに奮戦し,寄手をさんざんに討ち伏せた。加藤清正この有様を見て大いに怒り,竹井に渡り合って火の出るほど戦った。竹井は終日の戦いに疲労しているため,勇力無双の加藤がいらちて打つ刀に真向を切り割られ,清正に首を取られた。(中略)没後,秀吉公より「竹井将監儀無類の兵なり」とて,供養のため金子五拾両を賜り,清水長左衛門(高松城主・清水宗治)等と合わせ,宮内の賀夜坊にて供養したという。
後の天下人と堂々と渡り合った武将を地元では今でも誇りに感じている。遠藤周作は『反逆』という小説で竹井将監を登場させている。母方の遠祖に当たるということだ。
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