橋には様々なデザインがあり、通行の便宜を図るだけでなく景観を生み出す役割もある。我が家の近くの橋は2車線の対面通行であったが、交通量の増加に伴いもう1本平行して架橋され、上下線が分離された。面白いのは橋の形状で、古い方にはアーチがあるが新しい方にはない。景観を考えてのことではなく技術の進歩によるものだろう。
朝来市羽渕字柳に「羽渕(はぶち)鋳鉄橋」があり、兵庫県指定文化財となっている。
ひと口に鉄といっても、炭素の含有量によって鋳鉄(ちゅうてつ)と鋼(はがね)に分類される。鋳鉄は融点が低く鋳型に流し込んで成型するが、鋼は融点が高く加工は鍛造やプレスなどによる。鋳鉄のほうがつくりやすいと言える。ただ、鋳鉄の欠点は脆いことで、19世紀のイギリスでは鋳鉄橋の崩落事故もあったらしい。
技術の発展に伴ってやがて鋳鉄橋はつくられなくなっていく。したがって、全鋳鉄橋で現存するのは同じ朝来市内の神子畑鋳鉄橋とここの2つのみで、日本橋梁史上の貴重な遺産だ。この場所に架けられた理由とその美しさについて兵庫県教委の説明板に語ってもらおう。
「羽渕のめがね橋」の愛称のあるツースパン(ニ連アーチ)の美しい洋式鋳鉄製の橋である。明治18年頃に鉱石運搬用として神子畑から生野の間に五つの橋が架けられたというが、現在は神子畑鋳鉄橋(国指定文化財)と羽渕橋の二つしか残っていない。前者はワンスパン(一連アーチ)であるが、此橋は中央に円柱ピーヤ(支柱橋脚)があるためニ連となり、手摺の意匠とともに真に美しい橋である。しかし、洪水で一度流されたため修復されているのが惜しまれる。
鋳鉄製ニ連アーチ橋 橋長18.27m 幅員3.6m
今は公園内に移設され橋としての役割を果たしていないが、鉱石の運搬路となって明治国家発展に寄与した歴史と鋳鉄製という希少性と現代人の心を動かすデザインとを兼ね備えた「真に美しい橋」である。
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