目白御殿なら知っていた。田中角栄健在なりし頃、テレビによく映った大邸宅である。音羽御殿もあるらしい。鳩山一郎の豪華な私邸だったそうだ。そして、川崎にも御殿はあった。
川崎市中原区小杉御殿町一丁目に「徳川将軍小杉御殿跡」がある。
「小杉御殿」は地名でもある。しかし何もない。いったいどんな御殿だったのか。川崎市文化財団作成のパンフレット「川崎歴史ガイド 中原街道ルート」を読んでみよう。
小杉御殿は平塚の中原と江戸城を往き来する家康の送迎のため、二代将軍秀忠が慶長13(1608)年に建てた仮御殿に始まります。その後寛永17(1640)年に増改築が行われ、広大な敷地に御主殿ほか多くの屋敷が立ち並びました。家康や秀忠、家光などが、「お鷹狩り」を兼ねて民情視察をした際にはここが休息所に使われました。また中原街道を通る西国の大名などもここを利用したようです。
後に、東海道が整えられると小杉御殿の存在意義も薄れていきます。明暦元(1655)年から万治3(1660)年の間に建物は品川の東海寺と上野の弘文院に移築され、小杉からは姿を消してしまうのです。
家康、秀忠、家光である。おそらくその御殿には角栄さんも鳩山さんも及ぶまい。石碑の手前の中原街道は江戸に入る第一級国道の役割を果した時期もあったという。今もクランク状の「カギ」の道で古態を伝えている。遺構はなくとも地名が暮らしの中に息づいている。歴史が実感できる好環境である。
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