あけましておめでとうございます。今年の干支は辰なので龍にちなむ動物として、タツノオトシゴ、あるいはコモドドラゴンやウォータードラゴンなどのトカゲにスポットが当たっているようだ。龍は想像上のものだから、似た動物で代替するしかないが、伝説の宝庫である社寺ではお目にかかることができる。
岡山市東区西大寺中3丁目に高野山真言宗別格本山「金陵山西大寺」があり、西大寺観音院として親しまれている。本堂の屋根に龍の姿を見ることができる。軒丸瓦に山号の「金」、軒平瓦に「西大寺」の文字が読み取れる。
西大寺はもと「犀戴寺」といい、犀角(さいかく)を戴く寺との意がある。寺伝によれば宝亀8年(777)に、紀伊の安隆上人が大和長谷観音のお告げにより、備前金岡荘に観音堂を建立しようと来航の途中に、龍神から犀角を授かった。この犀角を鎮めた聖地に堂宇を建立したのが寺の草創だという。本堂の屋根の龍は、この龍神であろう。
それゆえ、近くの向州公園には犀の像がある。西大寺観音院には犀の置物などのコレクションがあり、お土産に張り子の犀を売っている。
寺宝の圧巻は国指定重要文化財である「朝鮮鐘」である。この梵鐘の意義は岡山市デジタルミュージアム図録『西大寺会陽五〇〇年と観音院寺宝展』(2009年)に解説してもらおう。
鐘は、日本に現存する朝鮮鐘のなかでは最大の規模を有しており、旗指や龍頭は精緻で、乳郭・上帯・下帯には牡丹唐草文が施されています。前後二個の撞座の間には五体一組の舞踏奏楽飛天が表裏に鋳出されています。製作年代は、中央の舞踏飛天が、沖縄県の波上宮朝鮮鐘(中国年号の顕徳三年<956>銘)の飛天と同范であることから、その前後に鋳造された高麗前期の梵鐘と考えられています。
正月三ヶ日に限って、この舶来の貴重な鐘を撞かせていただける。何とも有難いことである。写真のように遠隔操作で撞くところに一層の味わいがある。
さて、この冬、西大寺は会陽の季節になる。四天王寺どやどや、黒石寺蘇民祭と並び日本三大奇祭と称される裸祭りである。今回、裸たちが狙う宝木(しんぎ)を投下する御福窓も見学できた。階下には初詣客の姿が見えたが、2月18日には頭上に差し上げられた手が犇めいていることだろう。
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