ケータイにカメラ機能がついているせいか、テレビで視聴者提供の写真やビデオがよく紹介される。とりわけ先日の竜巻には驚いた。うねるように空に伸びる暗い雲。それはまさに、天に昇る龍の姿であった。今回の龍は厄災をもたらしたが、恵みの雨を降らせもする龍神でもある。
四條畷市南野六丁目に「起雲山龍尾寺」がある。曹洞宗のお寺である。
「龍尾寺」龍の尾というと何か伝説のにおいがするが、平安期の寺名は「滝尾寺」だったという。宗派は真言宗であった。寺の東方の山中には清滝瀑布があるから、寺名はこの滝に由来するのだろう。その後、鎌倉期には「龍尾寺」という名称が定着していく。『四條畷市史第四巻(史跡総覧)』の「古代期建立と判明する三寺院」の項から抜粋しよう。
滝尾寺の滝が、本字の瀧→龍となって、龍尾寺を称するに至ったものであろう。瀧尾寺から龍尾寺ヘ転じた時に、龍王感応伝説が生れる。一二〇〇年前の天平の昔、旱魃あって里人大いに苦しむ。行基菩薩これを憐んで山間に立ち、法華経を唱すれば大雨沛然(はいぜん)たり。龍王は身を裂いて里民の窮状を救ったものであろう。身は三分されて天空より落下した。住民深く感謝し、頭の所に龍光寺、胴体の所に龍間寺、尾の所に龍尾寺を建てて、その霊を弔った。前二者は大東市龍間に、後者が当市の龍尾寺となって、法灯を現在に伝える。
なるほど、祈る行基、身を裂いた龍王、そして、しっぽの落下、面白い伝説だ。さらに調べてみると、遠く千葉県にも似た伝説が見つかる。匝瑳市大寺の龍尾寺である。ストーリーは同じだが、雨乞いをしたのは行基ではなく、釈明というお坊さまである。
両寺院に共通しているのは、自然条件なのか、それとも宗派なのかと、さらに調べる。今は異なっているが、かつては両寺院ともに真言宗であった。真言密教では八大龍王などへの信仰が見られる。身を裂いてまで雨を降らせてくれた龍王。まさに神様仏様龍王様である。
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