当然入ったことはないが宇治山田駅には貴賓室があるという。今年6月30日、参院選挙の演説をするため近鉄で伊勢入りした安倍首相は、この貴賓室で鳥羽市内の旅館おかみらに面会した。もちろん伊勢神宮に参拝の天皇陛下もご利用になるそうだ。
伊勢市岩渕二丁目に近鉄の「宇治山田駅」がある。所在地の地名と駅名が一致していない。
宇治というのは伊勢神宮内宮の門前町であり、山田というのは外宮の門前町である。駅があるのは山田だが、「宇治山田」が駅名となっている。これは駅の開業時の市名が「宇治山田市」だったことによるという。
この三階建ての建物を見ると、新幹線でも走っているのかと思える。昭和6年の開業当時から高架だったというから驚きだ。当時は参宮急行電鉄の駅だった。開業80周年(平成23年)の近鉄のニュースリリースには、次のように紹介されている。
宇治山田駅は、昭和6年3月17日の大阪上本町駅・宇治山田駅間全通にあわせ、開業しました。約120メートルの間口を持つ鉄骨鉄筋コンクリート造3階建の外観は、クリーム色のテラコッタタイルや、スペイン瓦を用いた斬新なデザインで、神都伊勢市の玄関口としての気品と風格を漂わせており、平成13年には国の登録有形文化財にも指定されました。
文化財にもなっている駅舎を設計したのは、久野節(くのみさお)という建築家である。有名なところでは、東なら東武浅草駅(昭和6年)、西なら南海難波駅(昭和7年)も久野の設計である。どちらも百貨店のあるターミナルビルで、戦前モダニズムの風景を今に伝える貴重な建物だ。
建物を印象付ける右端の塔屋は、かつて火の見櫓として利用されていた名残である。建物内に昭和11年から43年まで市の消防本部があったのだ。
貴賓室あり、火の見櫓ありの駅舎はモダニズム建築の文化財である。さすがは天照大神のお膝元、神都・伊勢市の中心駅だ。みやげには「神都麥酒」がおすすめ。モダンなデザインかつ美味し。
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