花咲ガニを初めて食べた時の衝撃は忘れられない。蟹ってこんなに美味かったのか。しかも。殻にはたくさんの棘があって色鮮やか。味もビジュアルも強烈だった。花が咲いたようだから花咲ガニというらしいが、花咲港で多く水揚げされるからだともいう。
確かに花咲港を歩くとカニの店が多い。せっかく本場にやってきたのだが、今回の目的は別にあるので岬へと進んだ。その目的とは…。
根室市花咲港に「根室車石」がある。国の天然記念物に指定されている。カモメも飛んでいる。
古墳から「車輪石(しゃりんせき)」という副葬品が出土することがあり、その名称は車輪のような形に由来する。根室の丸い岩も車輪のような形状なので「車石(くるまいし)」という。碧玉製の車輪石が作られたのは古墳時代だと分かるが、「車石」という奇岩が形成されたのはいつだろうか。説明板を読んでみよう。
車石は、根室半島花咲岬附近一帯に広く分布し、方沸石を含み、アルカリ分に富む玄武岩質岩石中にみごとな放射状節理の発達した球状岩体です。
その形成当時は、白亜紀(6千万年〜1億3千万年前)といわれた時代でアンモナイト・イノセラムスなどの動物が、住めるような今より暖かい海でした。その海底の地下深くより千度以上もの温度をもったマグマが上昇し、海水を念んだ泥(根室層といわれている)の附近で水平に方向をかえ溶岩となって泥の中へ浸入してきました。そこで泥の中の海水は、この溶岩をどんどん冷やしていきます。表面は、冷やされるため、はじめは柱状節理といわれる柱のようになった割れ目が出来ますが内部はまだ溶けており、後方からおくられる溶岩によって先に進んでいき先端部より海水が浸入し内部を急冷します。
そして最後には球形の「車石」を多数つくります。このような溶岩を「枕状溶岩」どいい、この半島での岩質は粗粒玄武岩といわれており一般に長径1~2メートル、最大で6メートルにおよぶものがあります。このような火成岩の典型的な放射状節理構造は例も少なく学術上貴重であり太平洋に面する断崖に球状岩体の多数重なる様は、一大奇観であります。
根室市教育委真会
専門用語が多いので解説が必要だ。方沸石とはNaAlSi2O6・H2Oだそうだが、何のことかさっぱり分からない。要するに、玄武岩の「放射状節理」という珍しい岩体である。これは、球状になったマグマが冷えて固まる際に、中心部に向かって割れることで形成される。柱状節理は各地にあって、豊岡市の玄武洞がよく知られている。「玄武岩」という名称はここに由来する。
この車石は、アンモナイトやイノセラムスが示準化石となる白亜紀にできたというが、6千万年〜1億3千万年前というのはアバウトすぎる。いろいろ調べると、どうやら白亜紀末のことらしい。巨大隕石が地球に衝突し、恐竜をはじめとする大量絶滅が発生した頃である。
やがて夕暮れとなった。花咲風力発電所の羽根がクルクル回るごとに、空が赤く染まっていく。「車石」という名前もいいが、大輪の花に見立てて「花咲石」と呼んだらどうか。そんなことを考えながら帰途につくと、カニの直売所は店じまいをしていた。
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