「キュリー祭」というイベントが毎年、三朝温泉で行われている。今年で第64回を数える祭りが本日、7月26日に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響を考慮して中止となった。本来なら今頃はオリンピックが開催され全国的にも大いに盛り上がっていたはずだ。誰もがこんなはずではと思っているが、如何ともしがたい。曇り時々雨の蒸し暑い四連休となった。
鳥取県東伯郡三朝町山田のキュリー公園に「ピエール・キュリー マリー・キュリー夫妻像」がある。
「おい、マリー。なんで私たちはここにいるのかね。」
「あら、ご存じないの? ここはラジウム温泉で有名な三朝よ。私たちが発見したラジウムは、日本では温泉のことだと思われているの。」
「ちょっと違うけど、まあいいだろう。ラジウムのもつ放射能は医療にも役立つからな。」
説明の碑文を読んでみよう。
キュリー夫妻の功績について
三朝温泉は、ラドンの含有量が世界屈指のラジウム温泉として知られています。ラジウムは、1898年に、フランス人であるピエール・キュリーとマリー・キュリー夫妻によって発見され、1903年に夫妻揃ってノーベル物理学賞、1911年にはキュリー夫人がノーベル化学賞を受賞しました。
三朝町は、1951年から毎年8月にキュリー祭を開催し、キュリー夫妻の功績を称えています。
また、三朝町は、1955年に、我が国で初めてウラン鉱床の露頭が発見された地としても有名です。ここに使われているレンガは、過去のウラン探鉱活動で、ウラン鉱床にたどりつくまでに掘り出した土を原料とし、鳥取県並びに関係各位の御協力を得て建設した人形峠レンガ加工場において製造したものです。
キュリー夫妻によるラジウム元素の新発見という偉業は、今日の広範な放射線の医学や産業利用、更には原子力利用の大きな礎となり、現在に至る人類社会の繁栄の源となっています。
三朝町 独立行政法人日本原子力研究開発機構
2010年8月吉日
「我が国で初めてウラン鉱床の露頭が発見された地」は少し前に紹介した。原子力発電の燃料確保のため、国産ウランの探鉱活動が人形峠周辺で行われた。人形峠鉱山のほかに、東郷鉱山、倉吉鉱山があったが、このレンガの原料は東郷鉱山に由来する土である。
2010年当時は「現在に至る人類社会の繁栄の源」だったかもしれないが、翌年に発生した福島第一原発事故によって、原子力が負の遺産となりうることも明らかになった。放射能泉という泉質名も「!」と感じるが、こちらは長い歴史がその安全性を証明している。
「ラジウム温泉というが、正確な元素名で表現するなら『ラドン温泉』だな、マリー。」
「まあ、そうね。三朝温泉は1リットル当たりの平均ラドン濃度が474ベクレルもあるらしいの。」
「ベクレルと言えば、ウランの放射能を発見したアンリさんのことだね。今は単位の名前になっているのか。」
「そうよ。放射能の単位には他に、マッヘとキュリーがあるわ。」
「ん!? キュリーというのはもしかして…」
「そう、私たちのことよ。でも今は使われなくなってしまったの。古い単位系なんですって。」
「そりゃ、寂しいな。でもまあ、はるか極東の三朝の地に迎え入れられているのは私たちの誇りだね。」
「そうね。コロナの時代が早く終わって、たくさんの人が三朝に来てくれるといいわ。」
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