天邪鬼はひねくれ者だというが、こういう人はけっこう大切だ。前へ前へと進んでいるときに、後ろを振り返る。真正面から向き合っているときに、裏に回って見ようとする。都合の悪いことを尋ねられたら、「記録も記憶もございません」と返答する。
いやこれは、ひねくれていない常識的な官僚の答弁か。ひねくれ官僚が「会いました」とか「会っていません」と断言すれば、癒着だとか虚偽答弁だとか大問題に発展するだろう。どうなる?総務省。
岡山県久米郡美咲町両山寺に「天邪鬼の重ね岩」がある。
尋常ではない光景である。巨大な石造物がガラガラと崩れ落ち散乱したかのようだ。説明板には、次のように記されている。
天邪鬼(あまんじゃく)の重ね岩
足元に大小の岩石が多量に散乱しています。これは、昔、天邪鬼が天に登ろうとして岩や石を高く積み上げ、もう一歩で、ちょうど杓子の柄の長さだけ積めば天に届くというところで、岩が足らなくなって岩を取りに下に降り、その間に日頃から仲の悪い山の天狗が、こんな奴を天へ登らせたらどうにもならないと思い、エイッとばかり岩や石を一挙に突き崩してしまったためと伝えられています。これと同じ物が角石祖母にもあります。(昭和49年、県指定郷土自然保護地域)
中央町
ふつうなら、ひねくれ天邪鬼が身から出た錆で失敗するのがオチだが、こいつは地道な努力の出来るいいやつだ。岩と努力を重ねて高度を上げ、気象か地球、あるいは宇宙の謎を解明しようとしたのだろう。悪いのはどう考えても天狗だ。仲がよくないとはいえ意地悪にも程があるではないか。
この岩は安山岩で、節理が発達して岩体が崩壊したため、このありさまになったのであろう。そう考えると、天狗の意地悪は濡れ衣だし、天邪鬼の努力も虚構である。いっぽう、総務官僚の「記憶にない」という答弁は、真実ではないが虚偽と断定もできない。音声記録が出てくるまでは、これで押し通せるだろう。「面会した記録、お会いした記憶、真実を明らかにする気力、すべてございません。」おそらく、そう言うに違いない。
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