及ばぬ鯉の滝登りというが、誰もが実感できるから慣用句になっているのだろう。私も時の流れに身を任せながら時運に遇うのを待っていたことがあるが、流るる水は砂を運ばず、吹く風は枝を鳴らさず、降る雨が土塊を砕くこともなかった。私の中の滝登りは叶うことなく終わったのである。
岡山市北区牟佐(むさ)に「太戸(たいど)の滝」がある。長い段瀑で見応えがある。
ここは旭川源流の一つで、滝入口に「旭川源流之碑」が建っている。近くにある説明板を読んでみよう。
太戸の滝
本宮高倉山と竜王山を源にする、石原川の上流に位置し上段・中段・下段の三段の滝から成り立ち、落差は合わせて約五十mあります。
水に洗われて茶褐色に光る岩肌はとても綺麗で自慢です、水量の多い時は見事です。また、小魚や水生昆虫などが多く繁殖し、下流の石原川は蛍の飛び交う川としても有名で、秋には紅葉がとても綺麗です。
この周辺は私達ボランティアが美化活動を行っています。
太戸の滝を守る会
今回の水量は好天が続いたせいか、大したことはないようだ。それでも、落差50mの段瀑である。急傾斜の遊歩道は簡単に登れない。変化する水の流れを楽しむに適している。
だが、鯉にとって滝登りは至難の業だろう。いやそもそも鯉は滝を登るのだろうか。鯉が求めたのは、遠く及ばぬ高嶺の花であり、その美しさは「伝へ承るこそ心も詞も及ばれね」なのだろう。
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