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見るほどに夫婦に見える二柱

人の顔に見える自然物を見かけて驚くことがあるが、これは私たちが目鼻口を認知しやすい機能を有しているからだという。二つ並んだ岩を見ると「夫婦岩」と呼ぶのも同じかもしれない。試みに地理院地図で「夫婦」を検索すると、全国各地の「夫婦岩」「夫婦滝」「夫婦池」などが見つかる。ペアになって微笑ましく見えるのだろう。

「偶然とは思えない」自然の造形美が、偶然でなかったなら何なのか。すべての地形には成因があるから、神の見えざる手が造ったのでなければ必然と言えるだろうし、ここでしか見られない希少性を重視すれば、やはり偶然のように思える。

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高梁市成羽町布寄に市指定天然記念物「夫婦岩」がある。

高さにいい感じの違いがあるから、夫婦に見立てやすいのだろう。夫婦に見えるのは偶然だが、この造形美には何らかの必然があるはずだ。説明板を読んでみよう。

夫婦岩
石灰岩が浸食された大塊からなり、夫岩高さ十二メートル、妻岩高さ十六メートルで、愛児のような岩を抱いている。夫岩の方が基盤が高いため、妻岩より高く見える。
夫婦岩は海抜四百メートル、石灰岩の台地にそびえる。このあたりは珍しい石灰岩植物が自生し、眼下には成羽川が流れ絶好の眺望の場所である。
この夫婦岩はこれまで交通不便のため広く世に知られるところとならなかったが、大きさは二見が浦の夫婦岩の約二倍、わが国では比肩するものがないほど壮観といわれている。

妻岩が愛児を抱いている。そう言われたら不思議なことに、そうとしか見えなくなる。それにしても、なぜこの形になったのか。説明板には直接の説明がないが、ヒントがある。「石灰岩の台地」だ。

我が国の石灰岩台地の成因については、以前の記事「神の代から続く石灰岩の景観」にまとめている。ざっくり言うと、3億年前にできたサンゴ礁が移動して、2億年前に大陸にぶつかって付加体となり、その後、地表に現れた。そして、浸食によって多くは失われたが、二柱だけが残ったのである。

我が国の石灰岩は純度が高く、その台地は奇観に富んでいる。観光地としては鍾乳洞が人気だが、この夫婦岩は「わが国では比肩するものがない」と言われるくらいだから、まさに奇観。そのバランス感覚は奇跡としか言いようがない。近付いて見よう。

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夫岩の根元は上部よりも細く、台石とつながっていないように見える。ほんの偶然でそうなったのか。バランスに影響しない部分が浸食されたのか。考えるほどに分からなくなる。不可思議なことは宇宙人のせいにしたくなるが、ここはやはり、神様のinvisible handが造作したもうたと考えるほうが落ち着くだろう。


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