「ゆるぎ岩」を揺らしたことがある。動きそうにないものを動かせた時の感動は忘れ難い。「法道仙人」の遺跡を訪ねたことがある。鉢をドローンのように飛ばしていたのだという。あまりにも荒唐無稽な話で信じ難い。両者がコラボすると、次のような伝説になる。
加西市畑町(はたちょう)に「ゆるぎ岩」がある。
こんな大きな岩が本当に揺らぐのか。もし本当に揺らいで倒してしまったらどうしよう。いろいろ思いながら両手で押すが何も起こらない。その時、思い出したのは支点と作用点の距離だ。距離が大きければ力は小さくて済む。
右側の岩に右足を掛け、左手でゆるぎ岩のてっぺんに力を加える。初めは小さい力でリズムよく揺らし、次第に揺れを大きくする。そんなイメージなのに、岩に置いた手がグニグニ動くだけで、岩は動かなかった。説明板を読んでみよう。
ゆるぎ岩
この岩は、3億年前の古生代に海底に蓄積した生物岩できわめて堅く、高さ4メートル、ふくらんだ中央部の周囲は8メートルあります。
その昔、法道仙人が「善人が押せば動き、悪人が押してもびくともしない。この岩を押して動かない時は自分に邪心があるから罪悪をざん悔して正直慈善の人にたちかえりなさい」といって悪人を善人にたちかえらせようとこの岩を押させて心をためさせたと伝えられています。
加西市
悪人が押してもびくともしない。なーんだ、やっぱりね。じゃねえだろ、とツッコみたいが、ここは素直に反省すべきだろう。さすがはエスパー法道仙人、思い上がった私の心を矯正してくれようとしたのだ。
この岩は生物岩、つまり生物の活動や遺骸が堆積してできた岩石であり、このカテゴリに該当するのは石灰岩とチャートである。そして、極めて硬いという説明があるから、ゆるぎ岩はチャートであろう。
石灰岩は珊瑚など浅海だったことを示すが、チャートは放散虫の死骸が深海に堆積したものである。3億年前のプランクトンが深海で岩と化して今、山中で私と向き合っている。古代の小さき者が「正直慈善の人」であれと教えてくれた。
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