先月25日の夜明け前、三角形に並んだ月と金星、土星が困り顔に見えると話題になった。月が逆の向きだとsmiley face moonと呼ばれるようだ。目と口の認識を瞬時に行う本能を持つ私たちは、いったん顔に見えたら、そうとしか見えなくなる傾向がある。
以前、山中で化け物に出会ったことがある。そう見える岩なのだが、瞬時に化け物だと思った。その姿は「久米の不思議な岩4選」で紹介している。本日紹介する化け物岩も瞬時に判別できた。
三次市三若町の重宗山(別名繁峰山)の八合目辺りに「米噛岩(こめかみいわ)」がある。
偶然なのに、下顎に相応しい位置で割れている。偶然なのに、目の位置で岩が欠けている。しかも涙を流したような染みがある。封じられて動けなくなり、泣いて詫びているように見える。許してやりたいが、とんでもないことになるのかもしれない。説明板を読んでみよう。
米噛岩(経名石)について
岩が大きな口を開けたような形をしている。
言い伝えによると昔三若の里に一人の力で米千俵を蓄えると、この岩が出てきて一夜のうちに千俵を喰い尽くしてしまうといわれていた。しかし「南無妙法蓮華経」のお題目をこの岩に刻みこんでからは米を喰いに出なくなったという。
村人はこれを「米噛岩」というようになった。
平成三十一年四月
川西郷土史研究会
ご飯が大好きな化け物岩である。一俵など一口だろう。この怪物を封じたのは「南無妙法蓮華経」というお題目であった。
怪物の後頭部に題目が刻まれている。巡礼してきた法華の行者が刻んだのか、地域で信仰されている日蓮宗のお寺がしてくれたのか。いずれにしても法華経の功徳を説くねらいがあったのだろう。
最近は米価高騰で、政府による備蓄米放出も米不足には焼け石に水だ。米を取り込んでいるのではと悪徳業者の存在を指摘する向きもあったが、そんなことはないらしい。まさか米噛岩が蘇生して、米を食い荒らしているからでもあるまい。今一度、この岩を祀って米不足解消を祈るのが一番だろう。
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