廃止前の鉄道には多くの人が訪れる。失われゆくものを惜しむ気持ちはよく分かる。二度と同じ風景を見ることができないのだ。過ぎ行く時間さえ惜しい気がする。しかし,世の中そんなものだとも思う。長い歴史に同じものが長く続いた例はないのであった。
三木市福井2丁目に三木鉄道三木線の「三木駅」があった。
今年3月末をもって廃止された。三木の住民は神戸との結びつきが強い。にもかかわらず,三木線は加古川方面に伸びる。このため,旅客が減少して経営を維持できなくなったらしい。
大正五年(1916)に播州鉄道(現在の加古川線)の支線として開業した際には三木駅はなかったが,翌年に延伸開業によって三木駅が設置された。神戸でなく加古川と結んだ理由は次の二つだろう。もともと加古川水系の舟運によって加古川方面に産品を出荷していたこと。すでに播州鉄道が開通しており加古川と結びやすかったこと。
廃止まであと1ヵ月になって顔ハメが設置された。明るい表情の素敵な看板だ。開業を祝ったとしてもおかしくない。しかし,現実には赤字を背負いつつ消え去っていくことに哀愁を感じる。こうした感慨を求めて多くの人が訪れたのだろう。
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