和泉式部の史跡は随所にあるので,史実としての信憑性に欠けるが,民俗学的には興味深い。式部を騙ったのか,式部に仮託したのか,式部と混同したのか,いずれにしても人々の思いが籠っている場所だ。
姫路市青山2丁目の稲岡山の東山麓に「歌書ヶ渕」がある。
ここには,和泉式部が夫の平井保昌の任国播磨に来て青山に住んだときに歌を詠んだとか,式部が書写山の性空上人を訪ねる途中で立ち寄って歌を詠んだとか,あいまいな伝説がある。
写真の石碑の正面には「史蹟歌書ヶ渕 青山八景歌書秋月 秋の夜乃月に契りし深ければ歌もつもりて淵と也けり」,側面には「此の北平安の中頃歌人和泉式部が歌を詠みたりと伝う腰掛石」とある。
確かなことは,姫路藩主・榊原政邦が,青山の風光明美な地八ヶ所を「青山八景」として顕彰したことだ。風流な大名のおかげで,私たちも伝説を楽しむことができる。
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