胞衣(えな)とは,赤ちゃんの生命の土台であった胎盤や膜のことである。命を育んだ胞衣に感謝し,家の敷地内に埋める風習があった。それを胞衣塚という。歴史上の著名人の胞衣塚は各地に残っている。
文京区根津1丁目の根津神社に「徳川家宣胞衣塚」がある。
割石を積んだだけの素朴な塚である。根津神社以前には,5代将軍綱吉の兄である綱重の下屋敷があり,寛文二年四月五日に家宣がここで生まれている。生母は長昌院という。
家宣はもと綱豊と名乗っていたが,綱吉の世継ぎとなって江戸城西の丸に入るにあたって改名した。根津神社が千駄木からこの地に遷座したのは,家宣が世継ぎとなっていた宝永三年のことである。
宝永六年の綱吉の死により6代将軍となった家宣は,先代が百年は続けよと遺命した生類憐みの令を廃止し,新井白石を重用して幕政改革に取り組んだ。世にいう正徳の治である。しかし,正徳二年に在任約3年にして死去する。その死が惜しまれる名君であった。
根津神社の境内にある駒込稲荷神社は,家宣が生まれた屋敷の守り神であり,根津神社よりも古い歴史がある。屋根に葵の御紋がついている。春にはつつじまつりが盛大に行われる。花を愛でながら名君の事績を偲ぶのもよいだろう。
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