GLAY「BELOVED」,薬師丸ひろ子「交叉点」など,人々の行き交う交差点は詩の素材となることが多い。出会いあるいは別れの場であり,目標であったり節目であったりする。そんな辻には史跡もまた多い。
和泉市王子町3丁目に聖神社一の鳥居があり,その傍らに「國民精神總動員紀念」の石碑がある。
員は異体字で刻まれている。鳥居から神社に向かう参道と交差しているのが「熊野街道」である。古来,多くの人がこの辻を通過したことだろう。その中には上皇をはじめ貴人もいたことであろう。
国民精神総動員とは,昭和12年の日中戦争の勃発に伴い,近衛内閣が推進した戦意高揚のための国民運動である。その実施要綱に指導方針が次のように示されている。
「挙国一致」「尽忠報国」ノ精神ヲ鞏ウシ事態ガ如何ニ展開シ如何ニ長期ニ亘ルモ「堅忍持久」総ユル困難ヲ打開シテ所期ノ目的ヲ貫徹スベキ国民ノ決意ヲ固メシメルコト
写真の石碑は,昭和12年10月に王子青年団によって建てられている。同じ月には,国民精神総動員中央連盟が発足している。草の根の戦争が始まろうとしていたわけだ。
しかし,上からの指示によって始まった運動をすべての人が承服したわけではないだろう。実施要綱には「従来都市ニ於ケル知識階級ニ対シテハ徹底ヲ欠ク憾アリシヲ此ノ点ニ留意スルコト」とある。この辻を通り過ぎる人の戦意は高まったのであろうか。時代の様相を刻む貴重な史跡である。
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