水を治めるものは天下を制する。古来,治水は帝王の条件である。河は暴れる龍に喩えられた。それを如何に御し如何に利するか,人々は神に祈り知恵を出してきた。
中華人民共和国北京市海淀区新建宮門路にある頤和園に「銅牛」が跪いている。頤和園は西太后が愛した巨大な庭園で,その中心を占める昆明湖の東岸に銅牛がある。実に生き生きした姿をしている。乾隆二十年(1755年)につくられた。
牛の背中には「金牛銘」という80字の銘文が鋳られている。「夏禹治河」から始まるこの文章には,夏王朝の創始者・禹が鉄牛によって水害を鎮めた故事に由来することが記されている。
この日の頤和園は国の内外からの観光客で賑わい,昆明湖では水温の上昇で繁茂した水草を採る作業が行われていた。穏やかな瞳の銅牛だが,苦難の近代史をつぶさに見て来たに違いない。
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