学生時代に自転車で通っていた頃,お菓子の工場の近くを通ると,いつも甘~い匂いがした。深呼吸をして鼻で味わって,少しだけ得をした気分になったものだ。味や香りだけでなくパッケージからおまけまで,子ども心をくすぐるしかけに満ちている。今日はお菓子工場の紀行だ。
大阪市此花区伝法に「カバヤ食品株式会社大阪工場」がある。
カバヤといえば,「カバヤ文庫」という景品だとか「カバ車」という宣伝カーが有名だが,私にとっては古すぎて懐かしくもなんともない。しかし,この工場の年月を経たレトロな門柱は,現代にあっては逆に新鮮な感じがする。いったい,どんな工場なのだろう。此花区役所が今年3月15日に発行した「このはな こどもしんぶん」の3面に小学生記者のレポートが掲載されているので読んでみよう。
記者:どんなお菓子を作っていますか?
宮野さん:おもに,チョコレートのお菓子とぬいぐるみやおもちゃの入ったお菓子を作っています。
記者:会社ができたのは,いつですか?
田中さん:1946年(昭和21年)です。人間なら63才です。
記者:いちばん初めに作ったお菓子は,何ですか?
田中さん:キャラメルです。甘いもののない時代だったので,大人気でした。
記者:どうしてカバヤという名前なのですか?
田中さん:会社ができたのは,戦争が終わったすぐ後でした。カバには「おとなしくて平和を愛する」というイメージがあるので,平和な時代が続くようにという願いをこめて名づけました。
記者:ここに工場ができたのはいつですか?
田中さん:1951年にここにあった別の会社の工場でお菓子を作り始めて,1983年にカバヤ食品株式会社大阪工場になりました。歴史のある工場なんですよ。
どおりで歴史を感じるはずだ。では,どんなお菓子を作っているのかな。
さらに記者は香りについてレポートしている。
工場の中は,チョコレートのいい香りがしています。でも宮野さんは,ぜんぜん気にならないそうです。長年工場で働いているので,鼻がチョコの香りに慣れてあまり感じなくなっているらしいです。
記事の中でも「豆ちしき」が秀逸だ。
昭和28年に,ドイツから来たカバを水槽つきのトラックに乗せて日本中を回りました。本物のカバは珍しかったので,子どもたちは大喜びでした。そのカバは,石川県の動物園でいまも元気に暮らしています。日本一長生きのおばあちゃんカバです。
そうだったのか,現代史。いしかわ動物園のHPでは,次のように紹介されている。
いしかわ動物園で飼育されているカバは「デカ」ばあちゃんとして県民に愛されており、 長寿日本一としても有名になりました。2009年3月31日で57歳となり、世界では第2位の記録となっています。毎年敬老の日には、地元園児らのお歌とお遊戯で、そして担当職員手作りのおからケーキでお祝いをしています。
これはすごい。この製菓業界の恩人(カバ)を現代化遺産として推薦しようではないか。