最近は日帰り温泉に興味が湧いて、旅程の中に組み入れることも多い。温泉と史跡はけっこう結びつきがあって、弘法大師が杖を突いたとか白鷺が傷を癒したとか、その由来が伝説になっていることが多い。しかし、私が求めているものは由緒ある温泉の高級旅館ではなく、スーパー銭湯のような気軽に利用できる便利さである。ところが、最近出来た日帰り温泉は地下何百メートルを掘削して源泉を掘り当てたというものがほとんどで、どうも史跡と結びつかない。
高松市一宮町に「高松クレーターの湯天然温泉きらら」がある。日本にクレーター?いったい何があったのか?これぞ地球の歴史と深く関わる温泉ではないのか。
まずは館内に掲げられている解説を読んでみよう。
「高松クレーターの湯天然温泉きらら」の由来
高松クレーターとは高松市南郊の仏生山公園を中心に半径約八キロメートル最深約二キロメートルの半球型の巨大なくぼみのことです。
このくぼみの成り立ちについては、さまざまな推測がされていますが、千数百万年前のいん石の衝突跡であるという世界的にもめずらしい説も有力とされています。
そして、その高松クレーターの地下には約二十億トン早明浦ダムの約七杯分の水源がねむっていると考えられています。
当店「天然温泉きらら」は、この高松クレーターのくぼみのちょうど西のふちに位置し、源泉より毎分二百七十リットルというすばらしく豊富な水量に恵まれました。この水量で当店の浴槽は毎日湯を入れ替えることができるようになりました。
高松クレーターの幻の水源のごとくこんこんと湧き出ずる源泉には「高松クレーターの湯」と名付けました。
そして、太古の宇宙より「きらら」と輝きながらふり落ちたとされるいん石の様を当店の屋号としました。
どうぞ、宇宙からの恵みと壮大なロマンを感じながらごゆっくりとおくつろぎ下さい。
クレーターが隕石の衝突跡であるという。しかし、火山のカルデラ跡だという説もあって、1990年代半ばには熱く議論されていたらしい。いずれにしろ、クレーターは今ではすっかり埋もれてしまい地表には何も痕跡がない。それだけに「高松クレーターの湯」という命名とその看板は、見えない史跡を可視化するものとして貴重なのである。
で、結局どうなのか。隕石か火山かと言われたら、隕石を支持したくなるのが人情だろう。なにせ宇宙からの贈り物なのだから。しかも温泉が湧く。浪漫に浸るのには最適ではないか。
結論を求めていると、香川県環境森林部環境政策課が作成した「香川の環境」というサイト中に収録されている『「かがわの自然」の物語』の「かがわの地形と地質」にそれを発見した。
なお、高松市仏生山町で「高松クレーター」が、ニュースになったことがありましたが、当地の1,700mのボーリングコアから、前述の長谷川教授らによって、火山性の地質構造によるもので、隕石の衝突によるものではないことが明らかにされています。
まあ、考えてみれば、火山と温泉のほうが結びつきとしては自然だ。しかし、ここは理屈抜きにして温泉を楽しみ、隕石孔の発見という夢を見た時代があったことを懐かしく思い出せばよいのかもしれない。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。