都会の風景の一部を構成する野外彫刻が好きだ。抽象的で意味は不明なのだが素敵な彫刻ばかり見てきたので、具象も具象、これほど分かりやすく圧倒的な量感で迫ってくるものに出会った時には、ずいぶん新鮮に感じたものだ。
渋谷区恵比寿四丁目(目黒区三田一丁目)の恵比寿ガーデンプレイスで「ボテロ野外彫刻展」が開催されたことがある。2004年のことだ。上は「タバコを持つ女」(1987)である。
フェルナンド・ボテロはコロンビアの彫刻家で、この人の手にかかると何でも肥大化してしまう。肥えていてしかも素敵にかわいい。なんなんだ、この芸術性は。下は「頭」(1999)、その下は「馬」(1999)とタイトルもひねっていない。
この展覧会のパンフレットにボテロの言葉が載っている。
自分の彫刻には、バーナード・ベレンソン(美術史家:1865-1959)の言う、観る者の造形感覚を覚醒させるような要素と、官能性を持たせたいと思っている。色彩を多用する画家もいる。私は、極限まで『量感』を用いて表現するのだ。
信念の彫刻だったのだ。筋が通っていてカッコいい。時と場所と、そして金も得て開催された展覧会だった。ボテロの彫刻と同じ空間にいたことが今となっては貴重な体験となっている。
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