総選挙前は「原発」の前に「脱」とか「卒」とか、原子力発電所に対するスタンスを表す漢字一文字を冠した主張がよく聞かれたものだ。「反」は昔からよく聞くし、「縮」とか「減」というのも分かりやすい。「続」という主張はあまり耳にしないが、経済界を中心にひそかにささやかれているらしい。
県庁所在地で唯一、原子力発電所を持つ松江市の島根原子力発電所2号機での重大事故を想定して、先月26日に大規模な避難訓練が実施された。あってはならないことだが、備えあれば憂いなしである。1号機は大震災以前から停止しており、2号機も2012年1月27日に定期点検で停止しているが、「続原発」の見通しは立っていない。
上の写真が島根原子力発電所で、2つあるキューブ形の建物のうち、右が1号機で左が2号機である。撮影したのは2011年10月29日だから、この時の2号機は稼働中だったのだろう。
2011年3月の大震災の影響で、この年の4月2日に予定されていた恒例の「松江武者行列」が、10月29日に延期して行われた。騎馬武者の向こうには島根県庁、右に見えるのは松江城南櫓である。
南櫓は明治8年に取壊されていたものを平成13年に再建したものであるが、現存十二天守の一つとして有名な天守閣は国の重要文化財である。
松江城は、月山富田城主・堀尾吉晴の命により近世城郭にふさわしく築かれ、慶長16年(1611)に完成した。吉晴は完成を目前にした6月17日に亡くなったので、実際にはこの城に入っていないらしい。
しかし、松江の人々は堀尾吉晴公を「松江開府の祖」と尊敬し、吉晴公とその一行が松江城に入城する様子を「松江武者行列」として再現しているのだ。平成15年に始まった新しいイベントである。昨年度は行われなかったので、今年4月6日の武者行列は久しぶりとなる。
松江藩主としては茶人の松平不昧公が有名で、そのために松江の和菓子もおいしい。松平氏は格式の高い越前家で10代にわたってこの地を治めた。
それでもなお、3代で絶えた堀尾家の祖、堀尾吉晴公を武者行列によって顕彰しようとする気持ちがうれしい。いま、城の大手前広場の一角に吉晴公の銅像を建立すべく準備が進んでいる。完成除幕式は命日の6月17日だそうだ。
美しい水の都・松江を見ることができるのは、城地を選定し築城を命じた堀尾吉晴公のおかげである。原発防災訓練のことも含め、安心・安全な都市づくりに努力されている市民の皆様にも敬意を表したい。
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