不動岩(ふどういわ)という関脇がいた。昭和21年秋場所で関脇をつとめたという巨人力士で、身長は214cmだったという。小兵力士にとっては高い壁だったろう。ところが下半身が安定しておらず、関脇は一場所限りであった。これでは不動岩の名がすたるが、名と実が一致しないことなど勝負の世界ではよくある。
不動岩は熊本県の出身である。熊本県山鹿市に不動岩(ふどうがん)という巨大な奇岩がある。こちらはその名のとおり、ちょっとやそっとでは動きそうにない。
動かざること岩の如しの常識を覆すのが、香川県綾歌郡宇多津町2720-1にある「ゆるぎ岩」である。聖通寺の上の山にある。
本当に動くのか。まずはビデオを見ていただこう。
確かに動くのだ。どれくらいの重さがあるのかは、説明板に書いてある。
県指定天然記念物 昭和四十八年五月十二日指定
ゆるぎ岩は長さ3.5m。幅1.3mで重さ約10トンと推定される。
粗粒花崗岩特有の風化現象を示す貴重な資料である。
この大岩塊が片手で容易に揺れ動くのも珍しい。
香川県教育委員会 宇多津町教育委員会
10トンである。といっても、重いとしか分からない。とにかく、ゆるぎ岩が下の岩と接している部分が、シーソーの支点となり、絶妙なバランスがとれているのだろう。こうした岩石は各地にあるが、当ブログでも笠置山にある「ゆるぎ石」を紹介したことがある。
ただ、花崗岩は風化していくというから、このゆるぎ岩もいつかは揺るがなくなるのかもしれない。10トンの岩がバランスを保って人の手で揺らぐのは、地球の長い歴史の中では、ほんのわずかの期間だろう。そんな奇跡を我々は見ているのだ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。