夏は滝。猛暑のころはさらなり。水しぶきの多く飛びちがひたる。また、白絹を掛けたごとく静かに流れていくもをかし。深く青い山に分け入って分け入って出会う滝は格別だが、ドライブの途中に気軽に寄れる滝も話が早くてよい。本日は国道沿いにある名瀑の紹介である。
新見市草間に絹掛の滝がある。新見市指定名勝である。
石灰岩の絶壁をすべるように流れる姿が美しい。説明板を読んでみよう。
高梁川の侵食による下刻作用は著しく、阿哲台の石灰岩をV字状に深く刻んでいる。しかし、草間を流れる高梁川の支流の水量が少なく、本流との間に侵食の差を生じ三段の懸谷を形成した。
「絹掛の滝」は、白絹をかけたような気品にあふれる姿からその名が付けられている。眼前の「第一の滝」は高さ五十m余りで、上流の「中の滝」(高さ十二m)「奥の院」(高さ二十八m)の三段の滝から構成されている。「奥の院」は滝の裏側から滝しぷきが霧のように降りそそぐさまを見ることができる。
なお、絹掛の滝の岸壁の裾に岩屋があり、石仏の不動尊が安置されていることから、「不動の滝」とも呼ばれている。
このあたりは「阿哲台」という石灰岩のカルスト地形で、県の天然記念物に指定されている。同種の台地に有名な「秋吉台」があるが、こちらは国の特別天然記念物である。秋吉台とともに「平尾台」「四国カルスト」は日本三大カルストと呼ばれている。
これらのカルスト地形はすべて兄弟姉妹であり、古生代の石炭紀からペルム紀にかけて、温暖な南の海のサンゴ礁として生まれたのだという。今から3億年くらい前のことである。その頃、私たちの祖先は単弓類といって、大トカゲの親戚のような姿をしていた。
あれから3億年、サンゴ礁は積み重なって石灰岩となり、地殻変動によって北上した。単弓類は大量絶滅を生き延びて哺乳類として発展し、その一部は人類となった。大きなトカゲが見ていた美しいサンゴ礁は今、石灰岩の絶壁となり、そこを流れる滝を私が見ている。
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