自然に勝るものはないと言うが、音もまたしかり。心に響くお気に入りの曲も聴いているうちに、いつもの曲になってしまう。これに対し自然音は、聞けど飽かぬかも。ドライブの途中に、石の鳴る音がするという海岸の案内板があったので立ち寄った。鳴き砂は知っているが、石が鳴るとは珍しい。
鳥取県東伯郡琴浦町大字赤碕の琴浦海岸の西、花見海岸に「鳴り石の浜」がある。
観光地として売り出したのは平成23年からだ。全国各地の海岸は今やコンクリート護岸ばかりで、自然海岸の希少性は高まっている。自然海岸には岩石海岸が多く、浜を散歩できる海岸はさらに限られる。
車で通り過ぎるには惜しすぎるほどの景勝なのだが、古くから知られているわけではない。日本の伝統では「白砂青松」が景勝とされたので、「ゴロタ石」の転がる海岸は絵にならないと思われたのだろう。
海に近付いてみよう。波音の向こうで「カラコロ、カラコロ」と石が鳴る。波の加減で少しリズムが変化するので耳に優しい。ベンチに座って海を眺める人、ザクッザクッと音を立てて礫上を歩く二人、海に向かって石を投げる子ども、それぞれの楽しみ方のできる現代の名勝である。
ここは山陰ジオパークではないが、ジオパークの視点で眺めるとどうなのか。石は輝石安山岩。これは海岸の背後にある雄峰、大山から噴出した火山岩である。噴出したのは古期大山と呼ばれる数十万年前。これを川が長い年月をかけて海まで流し、日本海の波浪が丸く磨き上げたというわけだ。
テーマパークをつくって観光振興する時代はとっくに終わっている。カジノで観光客を呼び込むなんぞ、まったくの邪道だ。人はそこにしかないモノに足を運ぶ。琴浦の鳴り石の再発見は、観光開発による地方創生のお手本に思える。益々のご発展をお祈りしたい。
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